Global Architecture Awards 2025金賞受賞のご報告

このたび、EKAMが環境再生型造園を手がけた石場建建築が、国際建築賞「Global Architecture Awards 2025(GAA 2025)」にてGold WinnerおよびPublic Choice賞のW受賞を果たしました。

国際的な舞台で石場建という日本の伝統構法が高く評価されたことを、造園・土木に携わる皆さんと分かち合いたいと思います。今回は受賞のご報告とあわせて、石場建という構法がなぜ今、環境再生の文脈で注目されるのか——その歴史・施工プロセス・人体と生態系への効果を丁寧にお伝えします。

石場建とは何か——定義と歴史的背景

石場建(いしばだて)とは、柱の下に礎石(そせき)と呼ばれる石を据え、その上に直接柱を立てる日本の伝統的な建築構法です。現代建築の主流であるコンクリート基礎で柱を固定する「緊結工法」とは根本的に異なり、柱と石は緊結されず、建物は石の上に載っているだけという構成をとります。

この工法の起源は古く、飛鳥・奈良時代の寺社建築にまでさかのぼります。法隆寺や東大寺をはじめとする世界最古級の木造建築群もすべて石場建であり、1,000年以上の耐久性を実証してきました。江戸時代には民家にも広く普及し、戦前まで日本の標準的な建築方法であり続けました。

状況が変わったのは1950年の建築基準法制定以降です。コンクリートと鉄筋による「剛構造」が基準の中心となり、伝統構法は次第に制度的に施工しにくい立場に追いやられました。それから約70年が経過した今、気候変動・生態系破壊・化学物質過敏症などの現代的な課題を背景に、石場建の再評価が急速に進んでいます。

石場建の施工プロセス——現場で何をするか

石場建の施工において最初に行うのは、地盤と礎石の選定です。均質なコンクリートで固める現代工法と違い、石場建では敷地の地形・水脈・土質を精密に読み取ることが不可欠です。水が滞留しやすい場所、土が柔らかい場所を事前に把握し、適切な礎石の位置と大きさを決定します。

礎石には花崗岩・砂岩・玄武岩など地域の石材が使われます。礎石の上面は柱の底面に合わせて手仕上げで平らに整え、荷重が均等にかかるよう丁寧に調整します。礎石の下は栗石や砂利を突き固め、排水と通気を確保した地盤をつくります。

柱は礎石の上に立てられ、固定はしません。代わりに、足固め(土台代わりの横架材)と貫(ぬき)と呼ばれる水平部材が柱同士を繋ぎ、建物全体を一体的なフレームとして構成します。この柔軟な接合が、石場建独自の「揺れる建築」を生み出します。

床下は地面から離れた空間として確保されます。現代建築では防湿シートやコンクリートで塞がれる床下空間を、石場建では解放することで、土と空気と水の通り道を守ります。

人体・健康への効果——なぜ石場建の家に住むと体が楽なのか

石場建が人体にもたらす最初の恩恵は、地震力の分散です。礎石の上に載った柱が水平方向に微動できるため、地震エネルギーが建物全体に伝わらず吸収されます。これは制振・免震の概念に先駆けた、自然の知恵によるエネルギー分散機構です。

次に、化学物質フリーの居住環境という点が挙げられます。コンクリート・合板・接着剤・塗料に含まれるVOC(揮発性有機化合物)は、現代住宅における室内空気汚染の主要因です。石場建では木・石・土・漆喰など自然素材が主体となるため、シックハウス症候群やアレルギーのリスクが大幅に低減します。

また、床下の通気確保は湿気管理に直結します。日本の高温多湿な気候では、床下の湿気がカビや腐朽の温床となります。石場建では床下に風が通ることで自然乾燥が維持され、木材の長寿命化と居住空間の健全な湿度管理が同時に実現します。

さらに、石・土・木という素材が持つ遠赤外線の輻射熱・蓄熱効果は、エアコンに依存しない体に優しい温熱環境をつくります。これは現代の断熱性能とは質の異なる、素材そのものの調湿・調温機能です。

土中環境・生態系への効果——地面の下で起きていること

環境再生の視点から石場建を評価するとき、最も重要なのは地面との関係性です。コンクリート基礎はその性質上、地表の大部分を覆い、雨水の浸透・土中の通気・根の張り・菌根菌のネットワークを遮断します。これは建物の直下のみならず、周辺の土中環境全体に影響します。

石場建では礎石が地面の点点に置かれるだけなので、建物の下でも雨水は浸透し、空気は流通し、植物は根を張ることができます。床下空間はヘビ・昆虫・小型哺乳類など多様な生き物の生息域となり、生態系のつながりを断ち切らない建築として機能します。

土中環境の改善という観点では、礎石まわりの砂利・砕石は雨水の速やかな浸透と毛細管現象による水分の引き上げを促します。コンクリートで固められた地盤では水が行き場を失い、地表に溢れ出すか、深部にまで届かず土壌が乾燥・硬化します。石場建の建物の周囲では、こうした土中の水の動きが健全に保たれやすいのです。

また、石・木・土という素材はすべて自然に還ります。建物が役割を終えた後、コンクリートのように産業廃棄物として残ることなく、土に戻り次の循環へとつながります。これは建築のライフサイクル全体を通じた環境負荷の低さを意味します。

GAA 2025受賞作について——EKAMが手がけた環境再生型造園

今回受賞したのは、豊かな山林を背景に建てられた石場建住宅です。EKAMは敷地全体の環境再生型造園を担当し、水脈の読み取りと通気・透水環境の改善、在来種を主体とした植栽計画、そして建物と庭が一体となる設計を実施しました。

既存樹を一切抜かず、デッキの隙間から木が育つ設計としたことで、建物は文字通り「森の中に置かれた」空間となっています。礎石の間から雨が土に届き、床下では風が通り、木の根は地中で自由に広がる。石場建と環境再生型造園が組み合わさることで、建物と敷地が生きたシステムとして機能しています。

Global Architecture Awards 2025においてGold WINNERとPublic Choiceという二つの賞をいただいたことは、こうした取り組みが、国際的な建築・デザインの評価軸においても高い価値を持つことを示しています。

造園・土木プロへのメッセージ

石場建は「古いもの」ではありません。コンクリート以前の日本人が1,000年かけて磨いてきた、地形・気候・生態系への深い理解に基づく構法です。

造園・土木に携わるプロフェッショナルの方々に伝えたいのは、建物の構法と造園の設計は切り離せないという視点です。地面をコンクリートで覆う建築か、地面を活かす建築かによって、その周囲でできる造園の質は根本的に変わります。建築家や設計者との協働において、土中環境の視点から建物の基礎構法に踏み込むことが、これからの環境再生型造園に求められるスタンスではないでしょうか。

EKAMでは石場建建築との協働事例や、環境再生型造園の施工研修についてのご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

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