排水浄化システムの施工は、完成してしまうと、地表に数本の管と落ち葉のマルチが見えるだけになります。どんな層がどんな順番で埋まっているのかは、工事の途中にしか見ることができません。
この記事は、私たちEKAMが自社の敷地で自作した排水浄化システムの施工手順を、2025年1月の掘削から2026年5月の仕上げまで、約16か月分の現場写真で順を追って記録したものです。前回の仕組み・設計編で紹介した「嫌気の層・好気の層・土の層」が、実際にどう形になっていくのかを見ていきます。
工程ごとに、使った素材と、その素材を選んだ理由をあわせて書きました。同じものをつくる方だけでなく、炭や石を使った水はけ改善、雨水の浸透施設など、土の中で水と空気を扱う仕事をしている方の参考になればうれしいです。
排水浄化システム施工の全体像
最初に、施工手順の全体の流れを表にまとめます。
| 時期 | 工程 | 主な素材 |
|---|---|---|
| 2025年1月 | 遣り方・トレンチ掘削 | 重機、木杭、貫板 |
| 2025年2〜3月 | 水の浸み方の確認、底への炭と砕石 | 炭、砕石 |
| 2025年4〜5月 | 底の水平出し、床と縁、側壁と通気管、炭の埋め戻し | 砕石、コンクリート、レンガ、板、麻布、炭 |
| 2025年12月 | 槽の中に丸石、点検ます | 川の丸石、コンクリートます |
| 2026年1月 | 割石の蓋、砕石層、下流の点穴 | 割石、波板、砕石、塩ビ管 |
| 2026年2月 | 浸透ピット、有孔管、家からの配管 | 割栗石、炭、有孔管 |
| 2026年4〜5月 | 被覆とマルチング | ヤシ繊維、麻布、落ち葉、ウッドチップ |
途中、2025年5月から12月までは期間があいています。一気につくり切る必要はなく、層ごとに状態を確かめながら進められるのも、この工法のよいところです。
工程1〜3:掘削と、底をつくる
工程1 遣り方を出してトレンチを掘る(2025年1月)
まず木杭と貫板で遣り方(やりかた、掘る位置と高さの基準を示す仮設の枠)を出し、重機でトレンチを掘りました。建物からの排水が自然に流れ込むよう、配管の高さと勾配から逆算して底の高さを決めています。

掘りながら、壁面の土の色と硬さを観察します。表土の下は赤い地山で、ところどころに岩が混じっていました。
工程2 水の浸み方を確かめる(2025年2月)
掘ったトレンチに水が溜まり、なかなか引かない状態を確認しました。粘土分の多い地山は、水を受け取るスピードが遅いということです。この観察から、底と周囲に水と空気の通り道を意識的につくる方針をはっきりさせました。

工程3 底の両脇に炭、中央に砕石(2025年3月)
トレンチ底の両脇に炭を敷き込み、その後、底全体に砕石を入れました。炭の帯は、地山と構造物の境目に空気の層を残すためのものです。砕石は、上に載るものの重さを受け止めつつ、水を逃がす基盤になります。


工程4〜6:槽の器をつくる
工程4 水平を出して敷きならす(2025年4月)
型枠を立て、細かい砕石を敷きならして水平を出しました。排水浄化システムでは、槽の底の高さがずれると水が片側に偏り、一部の区間だけに負担が集中します。長い区間でも高さをそろえることが、全体をむらなく働かせる前提になります。

工程5 床と縁をつくる(2025年5月)
底にはコンクリートの床を打ち、両側の縁にレンガを並べました。ここは嫌気の層として、流れ込んだ固形物を受け止めて留めておく部分です。水を受け止める床と、層の境目を示す縁をしっかりつくっておくことで、この上に重ねる石や砕石の層が安定します。

工程6 側壁と通気管を据え、炭で埋め戻す(2025年5月)
板と麻布で槽の側壁を立て、その外側の両脇に、麻布を巻いた管を通しました。槽の周りは炭で埋め戻し、突き棒で何度も突き固めています。炭は突き固めても粒の中の孔が残るため、締まっていながら呼吸できる壁になります。


工程7〜9:石の層と点穴
工程7 槽の中に丸石を並べ、点検ますを置く(2025年12月)
槽の中に川の丸石を並べました。丸石どうしの間には大きな隙間ができ、上澄みの水と空気が通ります。この石の表面に微生物の膜ができ、好気の分解が進みます。区間の途中にはコンクリートの点検ますを据え、あとから中の状態を確認できるようにしました。


工程8 割石で蓋をし、砕石の層を重ねる(2026年1月)
丸石の上を割石で覆い、木の枠と波板で両側を縁取ってから、砕石を入れました。割石は、上から入る土や細かい粒が丸石の隙間を埋めてしまうのを防ぐ「蓋」の役割です。波板の縁は、砕石の層と周囲の炭の層が混ざらないようにするための仕切りです。


工程9 下流に点穴を掘る(2026年1月)
システムの下流側に、深い縦穴(点穴)を掘り、管を挿しました。点穴は、地表近くの水と空気を、より深い層へと導くための縦の通り道です。水を一か所に溜めるのではなく、立体的に分散させて土へ渡すことを狙っています。

工程10〜12:浸透ピットと仕上げ
工程10 浸透ピットに割栗石と炭を詰める(2026年2月)
別に掘った四角い穴に、割栗石(わりぐりいし、こぶし大から人頭大の割った石)を詰め、その上を炭混じりの細かい石で覆いました。石の隙間が水を一時的に受け止め、周りの地山へゆっくり渡していきます。


工程11 有孔管で水を分散させる(2026年2月)
砕石の層の上に、フィルターを巻いた有孔管を通しました。管の孔から水が砕石層の全体へ広がり、一か所に負担が集中しないようにしています。家からの配管もこの時期に接続しました。

工程12 ヤシ繊維・麻布で覆い、落ち葉とウッドチップで仕上げる(2026年4〜5月)
管と砕石の上をヤシ繊維と麻布で覆い、その上に落ち葉を厚く敷き、最後にウッドチップで地表を仕上げました。被覆材は土の粒が下の層へ落ちるのを防ぎ、マルチは雨で表面が締まるのを防ぎます。いずれも時間とともに分解され、表層の土の一部になっていきます。



施工手順で気をつけたいポイント
- 底の高さと勾配:配管から逆算し、長い区間でも水平をそろえる。ここがずれると一部に負担が集中する
- 層を混ぜない仕切り:丸石・割石・砕石・炭は、それぞれ役割が違う。麻布や波板で境目を守る
- 炭は突き固める:ふかふかのままでは沈下する。突き固めても孔が残るのが炭の強み
- 点検できる窓を残す:点検ますと縦管で、水位やにおいをあとから確認できるようにする
- 雨の多い時期の掘削を避ける:開いたトレンチに雨水が溜まると壁が崩れやすく、底も荒れる
なお、し尿を含む排水を処理する設備は、日本では浄化槽法の対象になります。同じ仕組みを検討する場合は、施工の前に必ず自治体の担当窓口へ相談してください。制度面の整理は仕組み・設計編にまとめています。

よくある質問
Q. 排水浄化システムの施工にはどのくらいの期間がかかりますか?
私たちの自社施工では、2025年1月の掘削から2026年5月の仕上げまで約16か月かかりました。途中で期間をあけ、層ごとに状態を確かめながら進めています。連続して作業すれば工期は短くなりますが、一気につくり切る必要はありません。
Q. 槽の周りを炭で埋め戻すときの注意点は何ですか?
ふかふかのまま入れると後から沈下するため、突き棒で何度も突き固めることです。炭は突き固めても粒の中の孔が残るので、締まっていながら空気の通り道を保てます。
Q. 丸石の上を割石で覆うのはなぜですか?
上から入る土や細かい粒が丸石の隙間を埋めて目詰まりするのを防ぐためです。丸石の隙間は水と空気が通り、微生物が住む大切な空間なので、割石を蓋にし、その上に砕石や被覆材を重ねて守ります。
Q. 施工で最も精度が求められる工程はどこですか?
槽の底の高さと水平です。底の高さがずれると水が片側に偏り、一部の区間だけに負担が集中します。配管の高さと勾配から逆算し、長い区間でも水平をそろえることが全体をむらなく働かせる前提になります。
まとめ
- 排水浄化システムの施工手順は、掘削、底づくり、槽の器、石の層、浸透と分散、被覆とマルチングの順に進めた
- 炭・丸石・割石・砕石・麻・ヤシ繊維・落ち葉と、役割の違う素材を層として重ね、境目を守ることが要になる
- 水平の精度、炭の突き固め、点検できる窓の3点は、あとから直しにくいため最初に丁寧に行う
- 層ごとに期間をあけて状態を確かめながら進められるのは、この工法の利点
排水を浄化する仕組みを、宿泊や飲食の事業に活かせるのかという疑問には、こちらの記事でお答えしています。